ピックアップ企業

(人物紹介)
トヨタ自動車株式会社
素形材技術部鋳造技術室 室長・モノづくり開発センター ダイバーシティ推進リーダー長澤 洋介さん

モノづくりエンジニアリング部要素技術開発室 主任
日髙 裕さん

素形材技術部接合・プレス技術室 主任
立山 望美さん

 

「男性は仕事」、「女性は家事・育児」といった固定的性別役割分担意識が、実際に家事・育児に携わる時間にも影響を及ぼしていると考えられていますが、男性も育児・家事に参画することが、これからの女性も男性も働きやすい社会につながると言われています。
そこで今回は、「ピックアップ企業」初!男性の視点も交えたインタビューを実施。参加してくれたのは、トヨタ自動車モノづくり開発センターの3名。管理職・男性技術員・女性技術員にお話をお伺いし、男女ともに仕事と家庭を両立させるための取り組みについて聞きました。

 

――トヨタ自動車には、どんな職種がありますか?また、従業員の男女比率について教えてください。

長澤さん
職種は、大きく括ると「事務職・技術職」と「技能職」、「業務職」の3つに分かれます。「事務職・技術職」はいわゆる総合職で、専門知識を活かしながら自立的に業務を行います。「技能職」は生産関係職、「業務職」は特定の業務領域で、高い実務力を活かし、自ら考え関係者を巻き込みながら業務プロセスを改善する役割を担います。トヨタ自動車単体での従業員の男女比率は、男性が約87%、女性が約13%(2023年10月末現在)です。


――皆さんが所属している「モノづくり開発センター」が立ち上がった経緯と、その役割について教えてください。

長澤さん
自動車業界は、100年に一度と言われる大変革の時代を迎えており、トヨタ自動車は自動車をつくる会社から、すべての人に移動の自由と楽しさをお届けする「モビリティカンパニー」への変革を進めています。そんな中、モノづくり開発センターは試作と量産の生産技術を融合しモノづくり力を結集することで、クルマ開発のスピードアップを図ると共に、新たなモビリティの開発を加速させるために、試作・設備・金型などの内製部門を集約し2020年に発足しました。現在は約4600名が在籍しています。

 

↑「モノづくり開発センター」で、ダイバーシティ推進リーダーを務める長澤洋介さん

 

――男性社会のイメージが強い技術職ですが、現在の男女比率は? その中で「女性活躍推進」を行う理由は?

長澤さん
男女比率でいうと、まだ男性の人数と比較すると女性は少ないのが現状です。ですが、これからはトヨタ自動車が目指す「Mobility for All」の実現に向けて、様々な視点が必要だと感じています。また働き方や就業ニーズにおいても、「選ばれる会社」にならなくてはなりません。そのためにダイバーシティの観点を、男性社会と思われがちな「モノづくり開発センター」にも取り入れ、性別や年齢などの属性に関わらず誰もが活躍できる環境を整えられるように活動しています。これは私のアメリカへの赴任経験がとても良い影響を与えてくれました。自身の価値観を発信し表現できる環境、仕事と家庭の両立を当たり前にしている彼らを目の当たりにして、「人生がより豊かになる生き方」として、自ずと答えが見つかったと思います。

 

↑役職関わらず、和やかな雰囲気が印象的な「モノづくり開発センター」の皆さん。 (奥左:素形材技術部鋳造技術室 主任・モノづくり開発センター ダイバーシティ推進担当 伊藤 翼さん、奥右:モノづくり開発統括部センター人事G・モノづくり開発センター ダイバーシティ推進担当 川上 夏海さん)

 

――具体的に、女性が活躍できるように、実施していることは何ですか? 

実施内容一覧
制度や環境整備の大まかなところは会社全体で取り組み、モノづくり開発センターではセンターの実態に即した環境の整備、風土醸成にむけた講演会や研修の開催を行っています。
<会社全体>
・次世代育成/裾野拡大
 グループ会社と共に設立した「一般財団法人トヨタ女性技術者育成基金」にて
 理系キャリア紹介および理工系女子大学生への奨学支援実施
・採用
 新卒採用における女性比率目標を設定し、採用活動を強化
 *事務系 40%以上、技術系 10%以上(該当労働市場の女性比率)
・両立支援
 不妊治療制度、事業所内託児所、病児保育施設、時短・在宅勤務制度
・キャリア形成
 メンタリング活動や社外プログラムへの参加
・上司向けの理解活動
 アンコンシャスバイアス研修、ダイバーシティ研修の実施
・管理職登用
 人事部と各職場が連携し、毎年昇格候補者の育成状況を確認
・幹部候補者の育成
 サクセッションプランに基づく候補者の育成

<モノづくり開発センター>
・男性育休という切り口で講演会の開催
・NTTドコモ様とコラボレーションし「より良い育休のための育休目線合わせシート」を作成
・建屋改善(トイレ・更衣室の整備など)
・若手女性技術員を対象としたキャリアワークショップの開催

 

長澤さん
上司の立場で申し上げますと、メンバーがキャリアを積んで行く中で、例えば出産・育児休職を経てもカムバックできるように、ハードとソフトの両面でサポートしています。その女性に両立を叶えるロールモデルになってもらうことで、「私も復帰して、あの人のように働きたい!」という横の広がりが生まれますよね。また、モノづくりの分野では、製造に必要な金型などの重量物を取り扱っており、熱い環境下で油や汗まみれになって働くイメージがあるため、魅力を感じてもらいにくい職場がこれまでありました。そこで、匂いがでない生産設備の開発を行うなど、魅力ある生産技術開発をして、女性だけでなく従事するメンバー全員がイキイキと働ける環境づくりに取り組んでいます。


――「モノづくり開発センター」から女性の活躍を推し進める意義とは?

長澤さん
モノづくりにおいても、お客様が多様であるため、多様な視点が必要不可欠です。今までのような男性社会のままでは、偏りが生じるのではと危惧しています。女性にもモノづくりに携わってもらうことで、トヨタ自動車も成長できるため、性別に関わらない全従業員の活躍が急務だと感じています。


――普段はどのように働かれていますか?

長澤さん
自分自身もフレックスタイムやフリーロケーション制度を積極的に活用しています。子育て世代はもちろん、年齢を重ねれば親の介護も話題にあがってきます。年齢などの属性に関わらずお互いの生活環境を認め合える風土を作り上げたいと思っています。


――その中で、二度の育児休職取得経験がある立山さんは、どんな経緯で入社されてどんなところに働きやすさを感じていますか?

立山さん
もともと私は学生時代から理系だったので、入社するときに男女の比率については気になっておらず「モノづくり」を通して、人々に喜ばれるものを作りたいという一心で、この職を選びました。その点では毎日とても充実しています。現在二人の子育てをしながら勤務していますが、保育園の送り迎えは夫と分担。私が送りの曜日は、勤務時間を1時間ずらしています。曜日が決まっていて同僚も理解してくれており働きやすい環境です。

 

 

――日髙さんも育児休職取得者とのことですが、その理由は?

日髙さん
一つ目は、育児の大変さを妻と共感したかったからです。妻は出産前に仕事をしていたので私の仕事の大変さを概ね理解してくれますが、自分は育児を体験しないと妻の大変さが理解できないと思いました。お互いの大変さを共有することで、価値観のズレから起きる夫婦喧嘩を避け、家族の時間を最大限楽しみたいと思いました。二つ目は、2022年初めの頃はまだ男性で2か月の長期(今では長期と言えないかもしれませんが)育児休職取得者の前例が少なかったからです。自分がロールモデルになれれば周りも後に続いて取得しやすくなると思いますし、自分が先輩になったときに育休取得希望者の気持ちや今後の新しい制度、他の制度への理解が深まり対応もしやすくなると思ったからです。
三つ目は単純に可愛い我が子の成長を毎日間近で感じたかったからです(笑)

 

――育児休職を取るためにおこなったことは?

日髙さん
職場に関しては、まず上司に出産半年前くらいからこまめに相談しました。同時に関係部署の担当者や仕入れ先様にも雑談レベルで適宜お伝えしました。出産2ヵ月前に取得日時と期間を決定してからは、上司とプロジェクト日程を確認しながら、今の仕事をどこまでやるか、誰に引き継ぐかを、その時点で具体的に決めて引継ぎがスムーズに行くように努めました。家庭に関しては、私の仕事復帰との兼合いもあり取得期間とその理由を話し合いました。その他は特に分担を決めたりはせず、趣味や休憩の時間を含めてお互いの予定を話あって柔軟に家事・育児をやっていこうと決めました。

 

 

――育児休職を経て、よかったことは?

立山さん
趣味だったヨガインストラクターの資格を取得しました。第2子の育休に入る前には、上司に「勉強する!」と宣言して自分を追い込んで(笑)、プログラミングを学びました。仕事に戻ったときに活躍できる何かを身に付けるのに、とてもいい時間だったと感じています。

 

日髙さん
我が家でも、自分が家事・育児をすることで妻に余力ができたので、復帰後のキャリアを具体的に考えたり、仕事に関係するスキルアップを図ることができていたようです。お互いに自己研鑽の時間を確保できたのは仕事・家庭の両軸で有意義でした。あとは、育児の大変さが分かったので、お互いに家事・仕事でストレスが溜まっても、それぞれの価値観を押付け合うような不毛な言い争いが無くなったと思います(笑)。


立山さん
確かに、家族で子育てに向き合うことで、人間力が養えた気がします。「子どものマネージメントはとても難しい」と聞いていましたが、本当に難しいですし。

 

長澤さん
子育てを通じて、会社で働くだけでは身につけられない人間力を養える、一つの自己成長の機会ということは確かにありますね。

 

――仕事と育児の両立を経験したお二人。仕事とプライベートの取り組み方に変化は?

立山さん
時間の使い方にメリハリがついたと感じています。以前は時間があればある分だけ仕事のことを考えていましたが、今では限られた時間で効率よく動くことをまず考えるようになりました。

 

日髙さん
人と情報を共有・相談して物事を進めることが多くなりました。特にプライベートでは、今まで勝手に週末の予定などを決めていたのですが、妻から「相談してくれるようになったね」と言われるようになりました。仕事の取り組み方としては、在宅勤務の制度を使って仕事と家庭の負荷のバランスを上手くとるようになりました。

 

長澤さん
仕事も家庭も、限られた時間の中でやりきるために、自分で考えるようになるね。「工夫」が生まれると、「生産性」も上がる。そのサイクルが身に付くのも素晴らしいこと!

 


――今後を担う世代が、育児に参画するにはどういったマインドが必要だと思いますか?

長澤さん
育児休職などの制度を活用する方々は実際に少しずつ増えていますが、まだまだ当事者以外が心から理解できていないケースもあるように思います。若い世代がダイバーシティを当たり前のものとできるように、上司である我々世代が理解を深めて、サポートをしていかなくては。

 

日髙さん
実際に、みなさんの理解とサポートはとてもありがたいと感じています。だから将来、サポートされる側からする側になったとき、気持ちよく行動してあげたいと思っています。あと、「女性は家事、男性は仕事」の考え方をなくすことが大切。

 

立山さん
まずは夫婦共同で育児や家事をすることで、お互いの得意・不得意を理解し合うことが大切だと思います。そして、お互いの欠けているピースを補い合うような協力体制が築ければ、仕事との両立もうまくいくと思います。あとは、会社においては、女性技術者の「両立者ロールモデル」がまだまだ少ないように感じているので、ロールモデルの選択肢を作っていきたいですね。同世代の悩みを共有したり話しあったりして、意見を吸い上げて形にするような。

長澤さん
この二人のように、実際に育児休職を取得して感じることや重要性を拡散する「インフルエンサー」は、会社にとってとても重要ですが、まだマイノリティな印象も否めません。属性に関わらず、より多様な人材が活躍できる環境にしていくために、これからも取り組みを進めていきたいと思います。

 

 

 


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