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2022/10/21

#4 次世代女性リーダーがつながる場所を創りたい。違和感を楽しむことがイノベーションを創出する。

こんにちは。名古屋市男女平等参画推進室の榎本です。
中部経済産業局が主催している、次世代女性リーダー育成講座(中部WIN)で出会った、松葉由紀子さんにお話を伺いたいと思います。

EY Japan株式会社|EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー運営事務局 松葉 由紀子さん

愛知県出身。大学卒業後、ベンチャー企業、セレンディップ・コンサルティング株式会社(現・セレンディップ・ホールディングス株式会社)などを経て、2015年2月に新日本有限責任監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)名古屋事務所へ入社。2022年7月からEYのメンバーファームであるEY Japan株式会社 東京事務所へ異動、現在に至る。

(-は榎本が発言)

東京と名古屋という2拠点での新しい働き方にチャレンジします!

-松葉さんは、今まで7年間名古屋事務所に勤務し、今年の7月からは東京事務所へ異動されたのですね。まずは名古屋事務所ではどんなお仕事をされていたのか教えてください。

松葉さん:
名古屋事務所では、名古屋企業成長サポートセンターに所属し、アントレプレナー(社会的に影響力のある起業家)、スタートアップ企業、ファミリー企業などのプライベート企業を対象に、長期的価値の創造と持続的な成長への支援を行ってきました。

特に「EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」(より良い社会の構築のために挑戦を続けているアントレプレナーの努力と功績をたたえる国際的な表彰制度。以下、EOY)においては、東海・北陸地区の運営事務局を担当していました。

本プログラムは1986年に創設され、現在、世界約60カ国135都市で開催、世界で最も名誉あるビジネスアワードとして認知されるに至りました。2021年の日本代表は、純米大吟醸「獺祭」でおなじみの旭酒造株式会社会長の桜井博志氏を選出。多数の素晴らしい歴代受賞者がおられます。

私は、EOY東海・北陸の3地区(名古屋・静岡・北陸)の統括と運営のマネジメントを行ってきました。また、審査委員、推薦部会、歴代受賞者の方々をはじめとする、本プログラムの支援者の皆さんと共に、新たな価値創出のためのアントレプレナー同士による交流の場作りを目指しています。

また、EY JapanではDE&Iの推進(※1)や女性アントレプレナーの支援にも注力しており、この活動については自ら担当したいと手を挙げて業務推進してきました。加えて、名古屋市主催のNAGOYA CONNÉCT(※2)においては、Women and Diversity Program Managerとして関与しています。

今回、東京事務所へ異動となりましたが、名古屋での業務も継続して行います。住まいは熱海に決めて、東京と名古屋という2拠点でのキャリア、新しい働き方にチャレンジし始めたところです。

※1 DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス):性別、年齢、障がい、国籍などの外面の属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などの内面の属性にかかわらず、それぞれの多様性を尊重し、認め合い、一人一人の能力を最大限に発揮できるよう受け入れて生かすこと

※2 NAGOYA CONNÉCT:毎月第2金曜日17時30分~21時、第4金曜日16時30分~21時に名古屋市主催で開催される「Venture Café Tokyo」のプログラム。多様なイノベーターたちによる講演やイノベーションを加速させるワークショップなどを通じて参加者は学びを得ながら、そこで得た共体験をてこにネットワークを広げることができる。参加無料。「なごのキャンパス」(旧那古野小学校)を中心に開催。オンライン参加も可能。

 

この地域に何か還元したい。女性たちが切磋琢磨しながら励まし合える場所を創りたい。


 ↑ネットワーク作りのイベントの運営メンバー(中部WIN第3期・4期有志)。和気あいあいです(真ん中が松葉さん)。

-本年度の中部WIN(中部経済産業局が主催している次世代女性リーダー育成講座)第5期の初回に、オブザーバーとして参加させていただいた際、サポーター代表の自己紹介の場面で、松葉さんが「孤立しがちな次世代女性リーダーが横につながり相談できる場が必要」と言われていたのが印象的でした。また、中部WINのメンバー同士がつながる場として、ネットワーク作りのイベントを企画し、献身的に積極的に動かれていて、その行動力は素直にすごいと思いました。

松葉さん:
まず、私自身が「次世代女性リーダーがつながり相談できる場」を欲しいと感じていました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でほぼ在宅勤務となり、その思いはより強くなりました。

また、2019年にJWLI(Japanese Women's Leadership Initiative)の研修プログラムを受講したのも大きなきっかけです。研修の最後に財団代表からの「あなたたちへ投資したリターンは財団ではなく、社会へ還元してください」とのメッセージは心に強く残りました。

またJWLIアルムナイ(同窓生ネットワーク)を通じて東京や全国各地の先輩女性リーダーたちと知り合い、一緒にプログラムの開発、運営を行う中で、ご自身の経験やリソースを惜しみなく与え、協力し合うメンバーの姿にもとても感銘を受けました。コロナ禍で孤立しがちだった私の励みにもなりました。

そして、私もこの地域に何か還元したい、女性たちが切磋琢磨(せっさたくま)しながら励まし合える場所を創りたいと思うようになり、中部WINやNAGOYA CONNÉCTでその実現に向けて動いています。

-松葉さんは、中部WINの第3期生(2020年度)なんですね。2年前、中部WINに参加のきっかけや体験談を教えてください。

松葉さん:
中部WINを知ったきっかけは、第1期に当社執行役員が講師で登壇し、そのアテンドとして参加したことです。その際、受講生の皆さんが元気に活発に議論している姿を拝見して、「すごくいいなぁ。私もこういった元気な女性たちと仲良くなりたい」と思い、中部WINに応募しました。

中部WINでは、グループワークとしてビジネスモデルの策定を行っています。私たちのグループは「中部地区の女性リーダーを紡ぎ育てる」というテーマで、私たちの感じる課題やありたい女性リーダー像など、それぞれの視点と価値観を共有しながら話し合いました。その中で、新しいキャリアに挑戦するメンバーもいて、私もとても触発されました。その中で、考えるだけではなく、Actionを起こすことが大事だと!と学びました。

それを受けて、中部WINの第3期、第4期のメンバーとNAGOYA CONNÉCTでのセッションを企画、登壇しました。グループや期を越えたコミュニケーションを持てる良さ、アウトプットしていく大切さを体感しました。

その経験から、グループワークのメンバー以外にもつながることができる場が必要だと感じ、中部WIN第5期(2022年度)で、受講生・卒業生のネットワーク作りのイベントを運営メンバーと一緒に立ち上げました。

 

 違和感さえも遠慮せずに発言できる場が必要なのです。


 ↑NAGOYA CONNÉCTでモデレーターを務める松葉さん

-松葉さんは、名古屋市主催のNAGOYA CONNÉCTで、女性向けセッションの企画・運営をされているんですね。NAGOYA CONNÉCTとの関わりについて教えてください。

松葉さん:
2020年にスタートしたNAGOYA CONNÉCTは、イノベーションを促進するための学びの機会とつながりの機会を提供する名古屋市の事業です。先に述べたJWLIへ参加したのが、関わりのきっかけです。NAGOYA CONNÉCTの趣旨に共感し、アントレプレナー支援という会社の業務に合致することもあり、会社の理解を得て、業務の一環として行っています。

本年度は新しい試みとして、「NAGOYA CONNÉCT Weak Ties女性コミュニティ~ゆるやかな絆でつながる信頼・尊重し合える仲間~」を発足しました。これは、仲間作りの「場」の必要性を強く感じていたからです。

イノベーティブな女性10名にコアメンバーとしてご協力いただき、その中で、「旗楽(はたらく)プロジェクト」を立ち上げました。旗楽プロジェクトでは、この1年をかけて、私たちの目指す「働きやすさ」について考えていきます。

メンバーとの議論では、全く異なる意見が出ることもあります。ただ、その違いこそが、メンバーの思考や行動に厚みと深みを持たせてくれ、イノベーション創出のきっかけを作ることになるのではないかと思っています。

そのためにも、違和感を恐れず、遠慮せずに、発言できる場が必要であり、そのことがより楽しく魅力的な場作りにつながると感じています。このようにして、仲間の輪が広がっていくことが何よりうれしいです。


 ↑NAGOYA CONNÉCT Weak Ties女性コミュニティのメンバー

 

「やりたいこと」をするために「やらねばならないこと」の棚卸しが必要です。

-仕事として「やりたいこと」ができているのはとても憧れます。でも目の前にはたくさんの「やらねばならないこと」があって……。どうすれば「やりたいこと」ができるようになりますか。

松葉さん:
中部WINやNAGOYA CONNÉCTでの活動は、私が「やりたいこと」でもあり、それらを会社の理解を得られて業務として関与できていることに、とても感謝をしています。

EYはパーパス(存在意義)として、「Building a better working world~より良い社会の構築を目指して」を掲げています。会社のパーパスと個人のパーパスが整合できていることは、強い原動力となります。

一方で「やらねばならないこと」もたくさんあります。それができずに「やりたいこと」をするのは本末転倒ですから、まず自分が果たすべき役割をしっかり自覚することです。

以前は、夜遅くまで働いて、多くの「やらねばならないこと」を全力でこなす生活をしていました。けれど、「このままではいけない!」と気付き、仕事の棚卸しをしながら、「やらなくてもいいこと」を考えました。いかに無駄を省き、効率的に行えるか、よりプロフェッショナルになるために、どうすればいいのかを考えて行うようにしています。

また、優先順位をしっかりつけるということも大切に。ここで言う優先順位は業務だけではなく、個人のプライベート、体力なども含めてです。良い仕事をするためにも、心身ともに健康で充実していることが基本であると、年を重ねて改めて実感しています。

また、最近大事にしていることがSpeak Outすることです。声に出すことで、相手とのコミュニケーションが深まったり、新しい気付きをもらえたりすることがあると知ったからです。また、声を上げるときは、不満ではなく、目標達成に向けて、より良いものを提案できるようにと自分なりに工夫しています。

 

仕事やプライベート全ての経験がひとつに重なり、今の自分があります。

-私、松葉さんはスーパーウーマンだと思っていました。いろいろ苦労されて、工夫されて今があるんですね。

松葉さん:
スーパーウーマン……(苦笑)、私、全然すごい人ではありません。
取材を機に、今までの自分を振り返ってみたのですが、まず大事なのは「己を知る」ことだとしみじみ思いました。そして「自分の在りたい姿」をより深く見つめること。ただ、自分のことは自分ではよく分かりません。だからこそ他人と関わり、多様性を知り感じることで、よりクリアに自分を見つめることができるのだと思います。

自分の強みや弱みを伝えてくれ、生かし合える仲間がいることが、かけがえのない宝です。そして、仕事やプライベートでの経験全てがひとつに重なり合いながら、今の自分があるのだと感じています。

ベンチャー企業、中小企業、大企業、ヨガインストラクターなど、さまざまな規模や業種の仕事を経験したことは、自分の強みになっていると思います。

 

地元の方々との触れ合いが、移住生活での知恵と豊かさを与えてくれました。

 ↑移住先の小原にてテレワーク中。自然の中で仕事する!? 思いもよらないことでした(笑)

-松葉さんは、会社の移住プログラムへ応募されて、2021年度は名古屋市内から、豊田市小原町の山間地域へ移住トライアルをされたとか。実際に体験されてどうでしたか。

松葉さん:
コロナ禍で自宅に一人こもっての生活は心身ともに息苦しく、また新しい働き方が「地方」では置いていかれがちなことに一石を投じられればと思ったのが応募のきっかけです。

移住先は、自然に囲まれ、聞こえてくるのは、鳥のさえずりと川のせせらぎのみ。仕事には集中できましたが、その一方で想定しないこともたくさん。虫、カビ、草刈りなど、快適な生活環境を維持するには多くの労力を要します。スズメバチにも刺されました!(笑) 街の暮らしは、何て楽で便利なのだ!と体感しました。

また、地域とのつながりも持ちたいと狩猟免許を取得。地元情報誌の編集メンバーとしても参加しました。取材を通じて、地域の魅力を知り、また地元の方々との触れ合いが、移住生活での知恵と豊かさを与えてくれました。

移住プログラムを通じて感じることは、知らないことがまだまだたくさんあること、やってみて初めて分かる!ということです。「環境」を整えることの大切さと同時に、内側である「わたし」が自律できていることが大切だと改めて強く感じました。自然の営みの美しさ、たくましさに感動した1年でした。

 

熱海での生活は、シンプルに自分が楽しいと思うことをやる。


 ↑熱海の眺望

-プライベートではどんなことをされているのですか。

松葉さん:
今までは休日も仕事のつながりで人に会ったり、活動に参加したりして、忙しく過ごしていたのですが、体力的にもいろいろガタがきていて……(笑)。最近は、シンプルに自分が楽しい!と感じることをやりたいと思っています。まずは、熱海を歩いて楽しむことですね!坂も多いのですが、テレワークで鈍った体への強制トレーニングも兼ねて(笑)。

海、山、まち歩き、いずれも楽しめるのが熱海の魅力です。散策、温泉、登山、野鳥観察、魚をおろすとか、やってみたいことがたくさんあります!目的ありきではなく純粋に自分がワクワクしたいです。

 

自己決定型の生き方。「人間力」を養うことが必要です。

-これからの時代の働き方について、どう考えますか。

松葉さん:
私の考えの根底には、「アントレプレナーシップ」があります。ファーストキャリアのベンチャー企業で初めてこの言葉を知りました。今まで、たくさんの起業家や経営者と接点があり、それぞれの方の考えに触れてきました。その中で、アントレプレナーシップは起業することだけではなく、自己決定型の生き方、すなわち「人間力」を養うことが必要だと理解して、今まで取り組んできています。

そして、これからは、選択肢が増え、柔軟性が増していく働き方になると思います。ただ、その中で、自由と責任は対であること。決断と責任は自分にある。そういった意味では、「優しく!厳しく!面白い!」働き方になっていくと思います。

 

まずは「やりたい!」と声を出す。そして周りを巻き込んで。他者との関わりが突破口になります。


 ↑EOY 2019 Japan東海・北陸地区アワードセレモニー懇親会(EY Japan EmployeePV)

-最後に、女性リーダー候補や、女性リーダーを目指したいと思っている方々へ一言お願いします。

松葉さん:
私からお勧めするのは、やりたいと思うことは、まず、やりたい!と思い切って声に出してみることです。大切なのは、今、「できる・できない」ではなく、「やりたい!」という自分の意思を発することです。その一歩が、自分の道を創っていくことにつながっていくと思います。

もちろん、大変なことはたくさんあります。その大変さを自分だけで解決しようとせず、周りを巻き込んでいきましょう!その中では、持ちつ持たれつ、相互補完し合いながらです。そして、人との出会いを大切に。人とのつながりがセレンディピティ(幸運な偶然を手に入れる力)を生みます。

また、絶対はないということ。相対的にとらえることも大切だと思います。例えば、私は、ある年に「七転び八起き」と書かれたおみくじを連続で引いたのですが(笑)。1回目は、まだまだ転ぶのか、としんみり。2回目は、まだまだ転べるぞ!と前向きに。

物事の解釈をどうとらえるのかでも全く変わってきます。自分で自分を楽しく元気にできることも重要ですね。そして、どんな選択をしても、どんな道を進んでも大丈夫です。自分の人生を愛すること。自分の愛する人生を生きること。笑顔で楽しく元気にいきましょう!

-今後の松葉さんのご活躍を応援しています! 本日はありがとうございました。

名古屋市スポーツ市民局市民生活部男女平等参画推進室
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