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2022/12/16

#6 専業主婦×キャリア。~思いを行動に変えてキャリアナビゲーターへ~

こんにちは。名古屋市男女平等参画推進室の榎本です。
今回は、前回コラムにご出演いただいた安藤先生の「自分力アップセミナー(安城市)」で出会った、セミナー卒業生の山本さんにお話を伺いました。

名古屋市立笈瀬(おいせ)中学校キャリアナビゲーター 山本妃呂美(ひろみ)さん

1980年生まれ。春日井市出身。商業高校卒業後、専門学校事務局に就職、4年勤務しながら短大通信制も卒業。医療事務へ転職し1年半勤務後、退職し愛知万博のNHKシアターでアテンドを経験。結婚し安城市へ。10年間の専業主婦期間を経て、次女の幼稚園入園と同時にマンションギャラリー受付での勤務を始める(派遣、約6年間)。2018年に国家資格キャリアコンサルタントを取得。2022年10月に転職し、名古屋市立中学校常駐キャリアナビゲーターとして勤務する傍ら、安城市のエンパワーメント講座スタッフの活動も継続中。産能大学通信教育部に在籍し心理カウンセリングコースを専攻。仕事と学びの両立をしながらの卒業を目指している。
夫・高1長男・中2長女・小4次女の5人暮らし。

(-は榎本が発言)

 

「子育て」が終わったら次は「介護」!?

-10年間の専業主婦期間を経て、約6年前に、マンションギャラリーでのお仕事を始められたんですね。その頃の心境を教えてください。

山本さん:
子どもは母親が育てるもの、妻は夫を陰で支えるものと思っており、周りからもそのように期待されていると感じ、専業主婦を10年やっていました。次女が幼稚園入園の時期になり、子どもの手が離れてきたときに、自分がこれからどうしたいのか分からなくなりました。「子育て」が終わったら次は「介護」…そのまま人生が終わってしまう気がして、何か自分にできることを見つけたいと思い、できることから行動をしてみました。

-どんな行動をされたんですか。

山本さん:
まずは、独身時代の友人知人に、子育てが落ち着いて自由な時間が少しずつ確保できるようになったことを連絡してみました。すると何人から単発の仕事を紹介してもらえて、すべて引き受けるつもりで働きました。次に、長期的に働きたいと考え、派遣社員としてマンションギャラリーで勤務を始めました。

ちょうどその頃、安城の広報誌に掲載された「育児中のママと考える今とこれから」「私のReスタートアップを考える」という講座内容と大学准教授が講師ということに興味を持ち、「私のReスタートアップ講座」(自分力アップセミナーの前身)を受講しました。それが、安藤先生や、キャリア教育との出会いとなりました。

 

安藤先生との出会い。そして「選択の軸」の変化へ。

-約6年前、マンションギャラリーの受付(派遣)勤務を始めた頃に、安藤先生が講師の、「私のReスタートアップ講座」を受講されたんですね。講座を受講されて、気づきはありましたか。

山本さん:
講座の中で、今までの人生を振り返り、自己理解を深めるプログラムがあります。
その中で、学生時代や就職してから現在までを振り返ったときに、人生の様々な分岐点で、最善と思って選んだ道に、どこか満たされない自分がいることに気付きました。
例えば、高校で成績をキープしていましたが、自分が思ったところに就職できなかったり、就職先で頑張ってみたものの、ロールモデルもおらず、そこで頑張っていく自分が見えなかったり。結婚してからは、夫の実家や仕事に合わせる生活が待っていたり…。
また、講座を通じて自己を見つめ直す中で、その理由について、人生の分岐点での選択の軸が常に違っていたからだと気付きました。

-「選択の軸が常に違っていた」、非常に興味深いフレーズです。具体的に教えてください。

山本さん:
人生で訪れる分岐点で、自分で考えて選択し行動をしているのですが、その動機が「自分が~したい」ではなく「~したほうがいいだろう」だったと気づいたんです。
「自分がやりたいこと」、「ありたい姿」ではなくて、「世の中でいいと言われていること」、「こうあるべきと思われていること」にしたがって選択をしていました。そのため、一般的には達成していると言われても、自分にとってその結果は、どこかしっくりこなかったのです。

-講座の最終回には、自分のこれからの行動計画を宣言する場があると聞きました。山本さんはどんなことを宣言されたのですか。

山本さん:
私は「アウトプットをする」と宣言しました。声に出して言うことがすごく大事だと気づいたからです。
実際、アウトプットをすることで、自分の考えを知ってもらえて、共感してもらえて、励ましやサポートを得られるようになりました。

 

これから自分がどう生きたいか。考えて、動き出す。

-講座の受講をきっかけに、「自分がやりたいこと」、「ありたい姿」を実現する、という選択の軸に変わったんですね。その後、どんな行動を始められたんですか。

山本さん:
まずは、意識的に、仕事や子育て以外の自分の時間をつくるようにしました。そして、考えていることをノートに書く、日記をつけるなど一人でもできるアウトプットの作業を行うようにしました。
次に、これから自分がどういう働き方をしていきたいのかを考える選択肢として、個人事業も視野に入れたので、安城市の創業スクールに通いました。人脈を広げることにもつながりました。
このような行動を起こすうちに、一歩踏み出すきっかけとなったキャリア教育について学びたいという気持ちがさらに大きくなり、キャリアコンサルタント養成講座へ通うようになりました。勉強の甲斐あり、試験にも無事一度で合格しました。

-キャリアコンサルタントの資格を取得されて、現在の、名古屋市立中学校常駐キャリアナビゲーターというお仕事に繋がっていくのですね。

山本さん:
実は、コロナ禍で環境が変わったことが影響しています。
マンションギャラリーの受付にやりがいと適性を感じていましたが、コロナ禍で仕事が激減したことや派遣会社が大口の契約を失ったことをきっかけに、転職を視野に入れ始めました。
また、次女が小学校高学年になり、子育てが落ち着いてきたこともあり、次のステップアップを見据えて今年4月から、通信制の大学へ3年次編入することを決めました。
今年に入ってから、キャリアナビゲーターの求人情報を目にして、興味を持ったのですが、平日8時間勤務と家事育児や大学での学びとの両立が想像できず、一度は応募を見送りました。
しかし、再度募集されたタイミングで家族の応援もあり、応募を決め現在に至ります。

 

周りに支えられて一つずつ階段を上って。目標は、夫の年収を超える!

-約6年前、安藤先生の講座を受けられてから、たくさんの行動をされていて本当に驚きました。その行動のエネルギー源は何なのでしょうか。

山本さん:
周りの人に支えられて、ここまで来たというのは間違いがありません。
私の中で、「自分がモヤモヤした生き方をしていて、子どもに何を伝えられるんだろう」「子どもにどういう自分を見せたいか」という強い問いかけがあって、それもエネルギー源の一つです。
そういう話を夫にもしてあって、夫がバックアップしてくれたことや、子どもが私の選択を応援してくれたことも大きいです。
一方で、「専業主婦をしている間に社会から取り残されてしまった」と感じていたネガティブな感情も要因の一つです。私だって社会でもっと活躍できる!という夫への闘争心のようなものかもしれません(笑)

-「夫の年収を超える!」ですね(笑)。前回コラムの際見学させていただいた、自分力アップセミナー(安城市)で、山本さんがパネリストプロフィールに書かれていた、印象的なフレーズです。

山本さん:
夫も私も、両親が他県出身で本家ではなく分家で、妹が2人の5人家族などの家族構成や学歴など条件が似ていたので、結婚してもお互いの立場は平等だと思っていました。しかし、いざ結婚してみると、当たり前のように、夫は仕事・私は家事育児という役割分担が求められたり、夫の実家中心で行事などが決まっていったり、夫と私の立場は大きく違っていました。私はそれを受け入れてやっていけると思っていたのですが、違和感が大きくて。このままでは嫌だ…という思いがエネルギーになりました。それが端的に表れたのが「夫の年収を超える!」です。

家族、安藤先生や周りからの励ましなどポジティブな要素とネガティブな要素の二つに押し上げられて、自分の中で「答えを見つけたい」と思い行動しているうちに現在に至りました。行動するようになって出会った方や、共感してくれる方に、押し上げてもらった感じです。

-約6年前、行動に移された時は、今のご自身の姿を想像されていましたか。

山本さん:
約6年前の自分は、今のような仕事に携わるとはまったく思っていませんでした。
目の前のことを一つ一つ選択して取り組んで、そこで出会った人たちにちょっと背中を押してもらって一つ階段を上って、また出会った人に支えられながら一つ階段を上って…それを繰り返していくうちに気づいたらここまで来たという感覚です。

 

キャリナビのひろみさんとして、笈瀬中学校で奮闘中。

-10月から着任されているキャリアナビゲーターについて教えてください。

山本さん:
キャリアコンサルタントの資格を持つ職員(=キャリアナビゲーター)が学校に常駐し、先生方と連携をしながら子どもたちの「社会で自立するための力」を伸ばすサポートをします。
名古屋市では、2018年10月から市内の小・中・高校の各2校(計6校)にキャリアナビゲーターが配置され、その後も拡充されてきました。2022年10月から新たに中学校30校が追加され、現在は、中・高校・特別支援学校60校に配置されています。
授業や授業案作成、個別面談、進路指導補助、保護者講演や現職教育(現職の教職員が、新しい知識を身につけ、技術を向上させるために受ける教育)など幅広く行います。
私が、笈瀬中に1か月勤務し実際に実施したものは、授業、キャリナビ通信の発行、学校行事のお手伝いなどです。

 
  ↑キャリナビ通信第1号

-私も「社会で自立するための力」を、自分の子どもに身につけてほしいと思います。一方で、高校入試や教育のカリキュラムは画一化されているイメージがあります。従来からの教育方針と、キャリアナビゲーターによるライフキャリアサポートは、共存できるものなのでしょうか。

山本さん:
笈瀬中学校の場合は、日頃から先生方が、キャリア教育を理解し、生徒との関わりの中に取り入れてくださっているので、教育の壁のようなものを感じたことはありません。
授業でどういうことをやるかについては、先生方と、ニーズを踏まえて事前にかなり細かくすり合わせています。
メインは生徒と先生で、私はその間を補う役割だと考えています。常に生徒や先生が必要としていることを頭に入れながら、キャリア理論でできることを考えています。つなぎの役割ですね。

-キャリアナビゲーターとして、どんな授業をされているのですか。


  ↑後日見学した2年生の授業の様子です。

山本さん:
初回は、3年生の授業で、自己理解を深めて、コミュニケーションを取る方法を体感するプログラムを行いました。
最初は、仕事のキャリアだけでなくて、ライフキャリアという考え方があるんだよ、という話をして、次に、人生100年時代で移り変わりが早いので…という話をして。
次に、事前アンケートで、自分に自信がないという生徒の意見があったので、長所と短所って捉え方が違うんだよ、というリフレーミング(=物事を見る枠組み(フレーム)を変えて、違う視点で捉え、ポジティブに解釈できる状態になること)の手法を話しました。
次に、プレップ法という発表の手法を話しました。結論を初めに言って、事例を挟んで、最後に結論をもう一回言うんだよという、面接にも、大人にも使えそうなテクニックです。そして、自分の良い所を見つけつつ、プレップ法を使って、具体例をあげながら、グループで話し合って発表しようというのをやりました。

-学んで、考えて、実践して。ワクワクする授業ですね。
-キャリアナビゲーターの仕事でやりがいを感じたことやうれしかったことを教えてください。

山本さん:
授業をした後、生徒から「キャリアについてもっと学びたい」という感想をもらったことと、先生方が温かく受け入れてくださったことです。お忙しいにも関わらず、皆さんに親切にしていただきとても感謝しています。


   ↑山本さんの、ある一日のスケジュール

 

プライベートの過ごし方に、心を整えるヒントあり。


  ↑山本さんとお子さんのとある休日の様子。
   香嵐渓(こうらんけい)の河川敷にて(豊田市)。
   (左から、長男・長女・次女・山本さん)

-プライベートでは3人のお子さんのお母さん。休日はどんなことをして過ごされているんですか。

山本さん:
午前中はウォーキングや軽いストレッチをしたあと家中換気をして洗濯や掃除をし、天気が良く子どもたちの部活や行事がなければ海や山など自然のあるところへ出かけます。三河地区は自然がとても豊かなので、行き先に困りません。
家でゆっくり過ごすときは、読書やピアノやお昼寝をして静かにすごしています。
とはいえ、三食作って掃除洗濯したらあっという間に一日過ぎてしまいますが…(笑)

-休日があっという間に過ぎるのは、本当に共感します。
-リフレッシュ方法、気持ちの切り替え方、モチベーションを保つために実践していることがありましたら教えてください。

山本さん:
起床後か就寝前に10分程度ヨガをするのを習慣に、体の緊張をほぐし深い呼吸も意識しています。
他には、一人でカフェへ行くなどあえて一人で過ごす時間をつくるようにしていますね。
モチベーションを保つためにやっているのは、たまに昔の日記や自分力アップセミナーで作ったアクションシートを見返すことです。初心に返り、自分の成長を自分で褒めるようにしています(励ましに近い感じです)。
あとは、自分はどうしたいのか、を常に確認するようにしています。

 

自分の人生の舵は自分がとる。

-最後に、人生の先輩として、今のままでいいのかな…と悩んでいる女性へメッセージをお願いします。

山本さん:
周りの人や社会からの期待ではなく、自分がどうしたいのか純粋に自分の気持ちと向き合ってみるのが大切だと思います。今の生活リズムに幸せを見出しているのであれば引け目を感じることなく今の生活を大切にしてもらいたいですし、現状を変えたいという気持ちがあるのなら、興味があるものについて調べたり人に話してみたりといった小さなステップで良いのでぜひ何か行動を起こしてみて下さい。自分の人生の舵は自分がとっているという感覚を持てることがモヤモヤから脱する一歩だと思っています。

-心強いメッセージをありがとうございました!

 

~おまけのレポート。後日、2年生の授業を見学してきました~

「職場体験すごろく」を通じて、実際に年明け1月に行く職業体験のイメージや、心構えを学ぶ授業を見学してきました。

「人生ゲームみたい」「げっ、1回休みになった」など、和気あいあいと楽しむ生徒たち。
すごろくの止まったマスのミッションを読み、選択肢を選んでポイントを稼ぎます。

例えば…
【マスNO.8のミッション】
「いよいよお仕事開始!予定外の仕事が入ったみたいで、担当の方が急に忙しそうに…」

それに対する選択肢は…
【A】「私はお客さんなんだから座って待つ」
【B】「何かお手伝いしましょうか?と声をかける」
【C】「ヒマだから隠していたスマホを取り出してラインでもする」

そんな中、生徒から、「Bの声をかけるのは迷惑になるから、Aが正しいと思います。それなのになぜBのほうが、ポイントが高いのですか?」と質問が。

「その時の立場によって回答が変わると思います。お客さんとして行く場合は、Aが正しいと思います。しかし、職場体験はお客さんではなくスタッフとして行くので、それではいけないんです。指示待ちにならないように積極的に社員さんに声をかけてください。皆さん、受け入れてくれますよ」と、山本さん。

へぇー、そうなんだー、と納得する様子の生徒たち。ゲームを通じて、考えて、学んで、生き生きと取り組む様子が印象的でした。
山本さん、笈瀬中の先生方、生徒の皆さん、どうもありがとうございました。

名古屋市スポーツ市民局市民生活部男女平等参画推進課
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